SWEET HOMES SWEET HEARTS
「最近ここいるよね?」
「へ?」
突然話を切り出されたので間抜けな返答になってしまった。
「いやだから最近ここよくつかってるなぁと思って。俺様の秘密の場所だったのにぃ」
そういえば地面を見渡してみればまばらに吸いがらがおっこちていた。どれもこれもフィリップモリスで彼は本当に一人でここを使っていたみたいであった。
「ごめんね。」
短くそう答えると彼はばつが悪そうに「いや、謝んなくていいよ。」と笑った。彼のその無邪気な笑顔からは想像できないが彼は「チ―マー」らしかった。その明確な定義はあいまいであるがとにかくあまり素行は良くないらしい。しかし私には小さいころからの付き合いのせいかそんなに悪い人物には思えなかった。事実、先生や普通の生徒には手を出さなかったみたいだし。(本ばかり読んでいた私は彼と昔の義賊を重ね合わせていたりした。)
それとは対称的に…鏡面的どころか光と闇と言った具合のレベルで私は対称的であった。クラスの華やかな女子とは違い比較的大人しめの女の子と仲良くしており、垢ぬけなかった。しかし、私はそれで満足していた。君子危うきに近寄らずではないがなるべく地雷が無いような人生を歩めれば私は満足であったのだ。
「髪なっげぇな。」
「いったっ」
「長いって。髪」
「余計なお世話です!」
そう言って腕を振り回すと彼はより楽しそうに私の三つ編みを振り回した。
「そんじゃ。」
そう言って突然三つ編みから手を離し彼は煙草をねじ消していった。跡には何だか納得のいかない私とほのかに鼻孔をくすぐる湿った煙草の匂いだけが残った。
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