I will be with You

特別。

私は知っている。私と賢志の間にある、特別な境界線を・・・。


「・・・痛い・・・」

「落ち着け詩織。此処で取り乱しても、痛みは治まらないんだから」

「でも・・・」

私が中学二年生の時だった。川辺を一人で散歩していた時、突然身体が縛り付けられたような痛みを感じ、動けなくなった。私は助けを呼ぼうとしたけど、携帯は圏外で通話もメールも出来ない状態だった。でもその時、ランニング最中の賢志がやってきた。

「そっか。此処、ランニングコースだったんだ・・・」
「痛みに何か心当たりはない？」
「無い・・・かな。突然過ぎるし・・・」

苦しみ小さく声をあげる詩織。賢志はその時、詩織を抱いて、仰向けに態勢を取らせた。

「・・・大丈夫。すぐ良くなる」

結局あれが何だったのかは分からない。でも痛みは引いていた。あの日以来、私の中で何かが変化した。何かが・・・。

「中学生だった頃みたいに・・・出来ないのかな」
「詩織は身体も精神も育ったみたいだね。大きくなってさ」
「そう？やった！私もっと成長するから！賢志は止まっていれば良いと思うよー」
「何で？」
「私の方が年上って思われるように、ね！」
「言ったな？」

賢志は弱めに詩織をくすぐった。詩織がくすぐられるのに弱いことは、昔から賢志は分かり切っている。二人とも笑っていた。

俺にも分かる。俺たちは恋人同士で繋がっている訳ではない。だが・・・俺たちは言葉では中々表しづらい、深い関係の人間なんだ。仲良いだけではなく・・・。

特別だって、分かってるんだ。


「いろいろ話せて良かったよ。詩織なら帰りは大丈夫だろう？」
「うん。自転車もあるし。今日はありがと！また会おうね」


そうして詩織は暗闇の先へと消えていく。ふぅっと一息ついた賢志。久々に詩織に会ったが、それで気持ちがリラックス出来たのである。

だが、家の扉を開けようとしたその瞬間―


「んっ・・・！」