史上最強お姫様の後宮ライフ覚書



「ねぇ…今夜、暇?」


それは大抵の女性ならば簡単に堕ちてしまいそうなその誘いは、酷く優しく甘美な響きだった。


恐らく、今までもこの囁きで数多くの女性を虜にしてきたのだろう。



しかし、当のリスティーヌは、自分が目の前の男に口説かれていることを察すると、冷静に現状の打開策を考え始めていた。


一応、この男とは仲良くしておいた方が、後々有利だということは彼女も理解しているが、この状況はかなり面倒だ。


社交辞令用の微笑みを浮かべながら、リスティーヌは心の中で舌打ちをした。


そもそも、この態勢になる以前に、リスティーヌならば相手の鳩尾に二、三発蹴りを入れるなど造作もないことである。


しかし、それが出来ないのも一重に彼の地位が関係していた。


 
< 32 / 55 >

この作品をシェア

pagetop