史上最強お姫様の後宮ライフ覚書
――セルスト帝国第二王子、フューレ・セルスター。
リスティーヌが嫁いだ皇太子殿下の実弟に当たる人物である。
一応、女癖が悪いとは聞いていたが、ここまで酷いとは考えていなかったのか、リスティーヌは油断していた自分にすら腹が立っていた。
確かに、侍女ならば手を付けても咎められはしないだろうが、少なくともリスティーヌとは初対面のはず。
にも関わらず、彼女を口説いている辺り、相当の女たらしであることが伺える。
そして、そのことが更にリスティーヌの怒りに油を注いでいた。
「フューレ様。そのようなお戯れはおやめください。」
苛立ちを抑えつつ今度は、はっきりと否定の意思表示するリスティーヌ。
これならば流石に拒絶の意志が伝わっただろう、と思ったのだが、どうやらそれでもこの馬鹿王子は気づかないようだ。
何やら訳の分からない言葉を耳元で囁き続けている。
――そう。既にリスティーヌの苛立ちは我慢の限界を超えていた。