屍の孤島
やがて、梨紅の『嘘泣き』に秀一も気づく。

「お前…!」

「フン」

憤る秀一など気にも留めず、梨紅はふてぶてしく席に座り、視線を鏑木に向けた。

「あんたもしつこいわね。煙草消せって言ってんのよ、オッサン」

「……」

その言葉に、鏑木の眉尻が微かに動いた。

注意深く見ていないとわからないほどの変化。

しかし生意気な梨紅の態度が気に触ったのは間違いない。

静かに、だが素早く。

鏑木の右手がジャケットの懐へと滑り込んだ。

そして…!

「あ…」

秀一と梨紅の見守る前で、鏑木は携帯灰皿を取り出し、吸いかけのマルボロを揉み消した。

「これで満足か?お嬢ちゃん」

薄く笑う鏑木。

その表情がどこか馬鹿にされているような気がして、梨紅は屈辱に顔を赤くした。

< 9 / 199 >

この作品をシェア

pagetop