幕末純想恋歌
「……ん……。」


うっすら目を開ける。


木でできた、和風の天井だ。


此処は……。


「あ、目が覚めた?」


若い男の声がした。


……誰?


「君、昨夜気絶したから、わざわざ運んであげたんだよ?この僕が!」


……あ、さっきの。


やっぱり、着物……刀、この部屋……。


「感謝してほしいよ。…ねぇ、聞いてる?」


「えっ、あ、はい!」


「そう?それならいいけど。いつまでもボーっとしないでよ。そうだ、君、名前は?何であんな所にいたの?」


「……私は、菖籐葵といいます。あの、つかぬことをお伺いしますが、今、何年でしょうか?」


一瞬、きょとんとして、


「は?本当につかぬこと聞くね。文久3年に決まってるでしょ。」


あぁ、やっぱり此処は、江戸時代……。   
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