遠い宇宙の果てで
ウォールデンはそう言って扉をさらに開き、愛美とピノを招き入れた。中には様々な実験器具の置いてある四角い大きな茶色の木製のテーブルと分厚い本がたくさんしまっている本棚がいくつもあり、紙と羽ペンが置いてある書き物机と椅子が一つずつあった。
(うわ~。いかにも魔法使いの部屋ってかんじ・・・。)
愛美はうきうきしていた。
「君には、ある特殊な魔法を学んでもらうんだけど、これが君の杖。」
と、ウォールデンは自分が持っているものより細くて短い木の棒を差し出した。
「これを、リターナス、といいながら一振りすればいいんだよ。」
愛美はそれを喜んで手にした。
「なんだ、簡単。」
「これ、杖を作るのに3年かかったんだが・・・。」
とウォールデンは頭を軽くかきながらもぞもぞと言った。
「だが、練習が必要だよ。ちょっと上に行こう。」
ウォールデンははしごを昇って小屋の2階に行った。愛美はピノを連れてそれに着いていった。そこには窓が1つあるだけで、何にもなかった。ウォールデンは愛美をピノが2階に来たことを確認すると人差し指を立たせ、その両手を合わせて不思議な呪文を唱え始めた。すると、そこは急に青空のもとの大草原へと変化した。
「ここが練習場だよ。」
ウォールデンはにっこり微笑んで愛美に言った。そして
「まずはそのイヌを小さくしてしまおう。」
と付け加えた。
(やっぱり・・・。)
「ピノ、元に戻るんでしょうか?」
「君が元の世界に戻るときに戻るさ。」
愛美はそれを聞いて安心した。ウォールデンは呪文を唱えてピノに向かって杖を一振りした。すると、ピノの体は瞬く間に小さくなり、ついにはお菓子のピノくらいになってしまった。愛美は小さくなったピノを手のひらに乗せ、胸ポケットに入れた。ピノには事の状況が分かっているようで、ピノはそこから顔を出して大人しくてしていた。
「ペットフード代がかからなくていいわ。」
愛美は苦笑いしながらつぶやいた。ウォールデンはピノの様子を確認し、
「さて、準備はいいかい?」
と愛美に問いかけた。
「あ、ちょっと待って。練習ってことはその・・・、凶暴化した聖霊の化身が現れるっていうことなんだよね・・・?」
「そうだよ。」
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