黄昏色に、さようなら。
フアサッと、スカートがめくれあがり、むき出しになった太腿に一瞬硬直。
ぎゃーっ!?
っと、心で叫び、
思わず持っていたカバンを放り出し純ちゃんの手を振りほどき、めくれ上がったスカートを必死に抑え込んだ。
み、見えたっ?
チラリと視線を上げると、純ちゃんはそのことには触れずに、若干含みのあるニコニコスマイルで、「景色も空気も良いし、腹も空いたから、ここで弁当にしようや」と、のたまった。
「はあっ?」
「弁当。今朝、お前んちのおばあさんが、俺の分も持たせてくれただろう?」
自分のカバンから、大きめの弁当箱を取り出し、かいた胡坐の上でイソイソと広げ始めた純ちゃんを、呆然と見つめる。
そ、そりゃあ、もう二時過ぎなんだから、お腹すいたけど、
確かに、おばあちゃんは純ちゃんの分もお弁当を作ってくれたけど、もしかして。
「まさか、ここまでお弁当を食べに来たってこと……ないよね?」
恐る恐る聞いたら、
「まあ、それもあるけど。とにかく、食べとけよ。腹が減っては戦はできないってね。先人たちも言ってるしな」
それもあるけどって!
これだけ人を不安のどん底に陥れておいて、呑気に弁当を食べようなんてっ!
と、何か文句を言おうとしたとき、
『ぎゅるるるるっ』と、隠しようがない大音量のお腹の虫様が、お鳴きになった。
「ほら、風花の腹の虫も、おばあちゃんの愛情弁当を食べたいってさ。んじゃ、ありがたくいただきまーす!」
純ちゃんがお弁当箱の蓋を、パカンと開けた瞬間。
ふわっと広がった、おばあちゃん特製の甘い卵焼きの何とも言えない良い匂いが、更にお腹の虫を刺激する。
「ううっ……」
悔しいけど、言い返せない自分が悲しい。