黄昏色に、さようなら。

こういう状況で純ちゃんと二人、のんびりとお弁当を広げるのも、我ながらどうかと思うけど、


やっぱり空きっ腹には勝てず、別にお弁当には何の罪もないわけで、


結局、


傍目には仲の良いカップルよろしく、二人並んでまったりなランチ・タイムが始まった。


お弁当のメニューは、ボリュームが違うだけで二人とも一緒。


やっぱり一押しは、おばあちゃんの甘い卵焼き。


ほんのり甘くてふんわりと溶けるような舌触りが、なんとも言えずに美味しい。


小さいころからの、私の大好物。


他には、鶏肉の入った五目野菜煮に少しピリ辛なキンピラゴボウ。


オカラ入りミートハンバーグに、おばあちゃんが漬けたキュウリの漬物。


ご飯の上には、のりたまのフリカケが程よく散らばり、赤い彩りは、定番のミニトマト。


鮮やかな緑は、湯がいたブロッコリー。


そして、やっぱり引き締め役は、肉厚の自家製梅干し。


これが又、あまり酸っぱくなくて、フルーティ。


ああ、美味しいものを食べている瞬間って、なんて幸せなんだろう。


いつも心のこもった美味しいお弁当を作ってくれる祖母に、心から感謝しつつ、


大好物の甘い卵焼きをカプッと一かじりした時、同じように卵焼きを口に運んだ純ちゃんが突然、クスクスと笑い出した。


「え、何? どうしたの?」


笑われるようなこと、してないよね?


訝しげに顔を覗き込むと、純ちゃんは笑いながら愉快そうに首を振った。


「いや、なんでもない」


って、ずいぶん楽しそうじゃないの。


「なによ?」


じろっと、下から軽くにらんでやったのに、やっぱり純ちゃんは楽しげに笑うだけで、答えてくれない。


「もう、変なのっ」


本当に、変! ずっと、変!


食べ終わったら絶対、積もり積もった疑惑の数々の答えを、とっくり聞いてやる!


と、密かに心の中で誓い、今はとにかくお弁当を口に運ぶことに専念した。

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