7つ真珠の首飾り
「こんなどうしようもない、若造の僕だけれどね」


彼はやっぱり続きを言わず、話を元に戻した。


「王座につくのを了承したのは僕だし、責任はまっとうしたいと思っている。

この恐ろしい宝玉は隣国の王の心を動かすなどという、そんなずるい願いは叶えてくれないようだ。

だからと言って、これの力を使って今の状態の僕の国が政治的、経済的な優位に立つようになってしまうぐらいなら、僕は、降伏した方がましだと考えたんだ。


こんなものに頼って力を得た国がなんだというんだ。
必ず同じことを繰り返すだけになるだろう。

それなら、降伏をして、苦しい思いをしながらでも国を再建していくべきだ。


そう思ったから、実はついさっき、独断で隣国へ降伏の意を示してきた。

だからこれから、よりいっそう真珠への欲望は強くなっていくだろう。

だからね、シズ、君にこれを」


そう言ってティートは、海藻にくるまれた真珠を差し出した。


「持っていて欲しいんだ」

「こ、これを……!?」


わたしはあまりの驚きに仰け反った。


「どうして?」

「伝説として知られている海の世界へ置いておくのは危険すぎる。

それに……僕はもう、シズには会えない。
これ以上シズと会っても、きっと僕がする表情も、話も、行動も、シズを悲しませるだけになってしまうと思うんだ。

シズは優しい人だから。


僕たちが会うのは今日で最後だ。

だけどシズに、覚えていて欲しい。

こんな厄介なものしかあげられないけれど、シズに、僕のことを、忘れないでいて欲しいんだ」

「……形見、ということ?」


言葉は震え、すがりつくように細々とした響きを持ってしまった。

ここへ来た瞬間に見えた彼の横顔に感じた不安。
それは悲しいことに、間違ってはいなかったのだ。
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