月の恋
今だに微妙な距離で警戒してる生綉姫に一度視線を向け
「それで…お姫様は鬼壟と夫婦(めおと)になる気はないの?」
水元は近くの机に乗っていたお酒に手を伸ばす。
そして、ゆっくりと杯に入れたお酒を喉に流し込み
水元は瞳を鋭くさせ探るように生綉姫を見る。
ーーーーーーゴクッ
少し離れたところで誰かが喉を鳴らした音がやけに部屋に大きく響く。
水元の瞳に本来(ほんらい)押さえてるはずの妖怪の力が入ったからなのか…
はたまた、彼の纏(まと)う空気が変わったからなのか…
さっきまで騒いでいた皆が今は生綉姫の答えを待つように静まり返っている。
そんな緊張が張り詰めた部屋に似つかない声が部屋に響く
その声は何処までも優しく誰の耳にも自然に溶け込んでいく。
「…ねぇ…お姫様」
君の答えによっては…
「…どうなの?」
俺は君を……
「俺に教えてよ」
殺さなくちゃね?
ニッコリと笑った水元に普通の者なら“普通の微笑み”に思うだろう
それぐらい違和感がないくらい優しい微笑みを水元は生綉姫に向ける。
そんな水元に一瞬、怪訝(けげん)な顔をした生綉姫は真っ直ぐ水元の瞳を見て…
『分からん』
ハッキリと答えた。