月の恋
きょとんと首を傾げる生綉姫を真っすぐ見つめる鬼壟。
ーークス
鬼壟は小さく唇の端を上げると冷たい声で話しはじめた。
「…人間風情がこの俺を侮辱するか…お前の命など一瞬にして消える埃のようなもの、生き残りたいなら覚えておけお前ら人間は私達鬼に生かされている、逆らえば殺されるとな…」
鬼壟はゆっくり立ち上がり、生綉姫はただ下を見たまま固まっている。その小さな肩が震えているのをまるでゴミでも見るように鬼壟は見下ろしている。
ーーふん…しょせん人間
『……けんな』
――?
ダン!!
生綉姫は急に立ち上がり鬼壟を睨み上げた!
『ふざけんなこのボケーーーーー!!!』
その大声に誰もが目を見開いた。
あのか弱気人間があの震えていた少女が鬼の血相で本物の鬼を睨み上げている
『さっきから黙って聞いてたらどいつもこいつも人を馬鹿にして!鬼がそんなり偉いか!妖怪がそんなに良いんか!うちの命が埃ならてめぇの命はなんぼのもんや!たとえ神様だろうが仏だろうが人の命の重さを馬鹿にした奴は!世界中のどんな埃よりも汚いわー!!』
「………」
『うちやってこんなとこ来たくて来たわけやない!どこぞのわからん鬼族とか言うやつに急に姫とか言われて14年間待ったとかほんま意味わからんねん!うちは!ーーっ!!』
コイツにこんなん言うたってしゃあないんは分かってる
だけど
『うちはただ!!明日も普通に過ごしたかっただけなんじゃー!このアホボケナスーーー!!』
ーーーッダ!!
生綉姫は散々怒鳴り散らしたあと地面を蹴って部屋を飛び出した。
涙が止まらんくて、悔しくて、苦しくて、自分で何言うってんかも意味不明で、でも口は止まらんくて
ただひたすらに走って走って外に飛び出した。
『っ!くそったれ!!』