月の恋
「…さっきお前、俺と目が合っただろ?なぜそらした?」
静かに淡々と話すその声は生綉姫に問い掛ける。
はぁ?なんでもなにも……
『何であんたと目合わしとかなあかんの?』
生綉姫はあまりにも変な質問に肩の力が抜けた。
この美形さん何言うてんの?
街でも他人と目が合ってもずっと合わしてる奴なんてそうおらん…全く知らん赤の他人やねんから
だが“この世界”は生綉姫の世界とは違う
鬼や妖怪の中で目が合って目上の人より先にそらす行為は目上の人を見下し侮辱してるのと同じ行為だということに…だがそんな掟、生綉姫が知るはずも無い……
生綉姫が発した言葉がどれほど重罪かも…この少女は知らない…
少女の目の前にいるこの男は
妖怪や鬼を従える“鬼族の長、鬼壟(きりゅう)”
そこに居るもの全員が同じことを思っただろう
アノ、ショウジョワ、コロサレル