月の恋


「人かのぉ~難しいのぉ~」



何が難しいんや、何が!




『…もう第2低に向かったほうが良いよな~…』

名前分からんで捜せるかな?




はぁ~~~……






まぁ!しゃ~ないどうにかなるか!!





『よし!』っと勢いよく立ち体を伸ばす。



『じゃ、じいーちゃんそろそろ行くわ!ミタラシ団子ごちそーさん』




第2低に向かおうと歩きだした生綉姫に柔らかい声が呼び止める。



「のぉ~…生綉姫」



『…え?………どしたん?』



始めてちゃんと名前で呼ばれ一瞬ビックリしたものの、振り返った生綉姫はベンチに腰掛けるおじいさんがどこか儚く見えて……少し切なくなった。



そしてやっぱり“誰か”に似ている。



だがその“誰か”はもう分かってしまった

優しく愛おしむようにマーガレットを見つめる姿はほんとにそっくりだ……



あぁ、そっか…このじいーちゃん





そんなことを想いおじいさんを見つめる生綉姫にゆっくりと口を開く。




そしてーー…


その言葉は生綉姫の思考を止めるには十分な力を……





「おぬしは……鬼壟に会いにきたのか?」













『………………は?』




持っていた………。

















『んなわけあるかぁーーーーー!!』




「お?違うのかのぉ~?」

『ちゃうわ!!』


「っふぉふぉふぉ~」




確かに!!“き”からはじる人とは言うた言うたけど!!



その名前だけは今は聞きたくない!!



あぁーーーー!!


鳥肌がああぁぁぁぁ!!!!








それからしばらく生綉姫の叫びは屋敷内に響きわたり何事かと探しに来た暁岾によって治まったとか治まらなかったとか……。

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