月の恋
はぁ~うちは本間何やってんねん
今、生綉姫は暁岾の後ろに付いて天鬼低(てんきてい)へと向かっていた。
『暁岾さん…本間にごめんなさい…』
「いえいえ良いのですよ」
忙しいはずの暁岾が自分の叫び声を聞きつけ来てくれたことに申し訳なくなり前を歩く暁岾に謝る生綉姫。
『ちゃうんです!うち…第2低に会いに行かなあかんかった…え~と…き…き』
「き?…あぁ、霧戸(きりと)のことですか?」
『あっ!それそれ!…ご…ごめんなさい…会えてないんです…』
「え?」
あまりにもションボリとする生綉姫に暁岾は小さく笑う。
「…生綉姫様は会っておられませんか?白髭のおじいさんに…」
『え?あ…はい会いました…けど』
「クスクス…その方ですよ霧戸は」
『……は?……はああぁぁぁ!!』
「…クスクス、少しお茶目な方なんです」
いや…お茶目って……うっそ~ん
あのじいーちゃん絶対わざとやな!
だからじいーちゃん知ってる暁岾さん来る前におらんくなっとったんやな~っ!
ほんま何者や!!
「ークス、あ…それより何かあったのですか?」
『え?』
「あんなに大声を出すほどです、何かあったんじゃ……まさかまた誰かに何かされて」
『いえいえ違います!ちょっと思い出してしまって』
「思い出す?」
『あ…えっと…その……』
あかん!言われへん!
暁岾さんは一応あの変態野郎(鬼壟)のこと主人的に思ってるしその主人のあんなこと聞いたらショック受けるやろし……
あぁ~どないしよ!
一人『う゛~ん』と唸る生綉姫を見、暁岾はやっぱり何かあったのではないかと心配になる…
だがその心配は次の瞬間に綺麗に消えた…。