月の恋
……分かる…分かるさぁ…
蒔騎、テメェの言ってる事は…
全部……
お前は記憶を無くした生綉姫にこれ以上妖怪という存在に近づいて、思い出してほしくなかったんだろう…
だが生綉姫があの“月姫”だとどっかの妖怪が気づき狙い始めた
自分自身も、もうあんまり関わる気なんてなかったのに命を狙われてるとあってはほっとけるわけねぇ。
“コイツ”にはそれだけの力がある。
お前が俺達に下手に知らせてどっかからその情報が漏れそれを他の妖怪が知れば余計に生綉姫を危険にさらすことになる。
これ以上、生綉姫が狙われるのを…記憶を取り戻し思い出してしまうのを恐れたんだろう…
だから最小限で命懸けで守って来たんだろう…分かる……嫌でも分かった…
お前はいつだって優しくて、正しい……
だけど……
「だけどな…蒔騎…」
鬼壟は小さく俯く蒔騎を睨みながら低い声を出す…。
「……許せねぇ」
「………」
「この14年間どれだけコイツの周りにいた奴らが苦しんだかしらねぇだろ…」
「分かってる」
「分かってねぇ!てめぇだけで決めて!てめぇだけで守って!お前はそれで満足だっただろ!!だけどなっ!」
鬼壟は蒔騎の胸倉を掴むとおもいっきり引き寄せて睨みつける。
「あの日守りたくて!守れなくて!自分の慕ってた人が2人も死んだ苦しみと闘って生きてきた奴らがここには何万といたんだ!!」
「………」
「今さら生きてましたなんて言われて、はい、そうですか。って言えるほど皆強くねぇーんだよ!それぐらいコイツは皆にとって大事な存在だってお前も分かんだろ!!」
「………」