月の恋
「姫様が人間界で過ごすようになってから少したったある日…誰かが姫様の命を狙いだした」
「なっ!…どういうことだっ!」
鬼壟が少し声を荒げ蒔騎に歩み寄る。
「大声を出すな…起きる…」
「…ちっ」
横で鬼壟が舌打ちをするのが耳に届く
蒔騎は小さく寝返りを打った生綉姫に手を伸ばし顔にかかった前髪をそっと横に流してやる
「……狙ってるのが誰かは分からない。これは俺の推測だが姫様を狙っているのは…城を焼き滅ぼした奴らと同一人物だと俺は思ってる。だからお前達、鬼や妖怪には知らせなかった」
「なぜだ…もし本当にそうなら力を合わせてコイツを守るべきだろ!」
「それがいけないんだ…」
「何でだよ!意味分かんねぇっ!」
「言ったろ!!…俺は姫様には人間界で暮らしててほしかった。姫様は勘が鋭い方だ、いくら裏だったとしても大人数で動いてみろすぐに勘づく…だから俺と滝と亜紀子で動いていたそれにこれ以上他の妖怪に知れ渡り姫様を狙われては対処できなくなる」
「………」
「お前だって分かるだろ…“月姫が生きている”その事実がどんなに危険か…それも護りが薄い人間界だ…お前や暁岾や、他の月鬼族に知らせる時に情報が漏れては困る」
だから知らせなかった…そう最後に付けたし蒔騎は黙る。