時雨の奏でるレクイエム
夕方、ラディウスとクルーエルは仕度を整えて、窓からモンスターが蠢くのを見ていた。
あと、数分もしたら、砂漠にもぐろうとするだろう。そのときを見計らって攻撃を仕掛けるつもりだった。

「二人とも、気をつけて」

シトロンは、姉のことも心配だろうに、気丈に振舞っていた。
ラディウスは気が引き締まるのを感じる。
ここで自分達が失敗したら、クルーエルはおそらく、あの化物に囚われてしまうだろう。
そして、化物の子供達が村を食い尽くすに違いない。
吐き気をこらえ、ラディウスはモンスターを睨みつけた。


そのとき、今までただ蠢いていただけのモンスターが、触手の一つを他の家の窓を食い破り、そこから人を引きずりだした。

「っ!!」

「ラディウス!」

ラディウスは息を呑んだ。
クルーエルは慌てて家にシールドをはる。
この家に襲い掛かってきた触手が弾かれる。
触手はそのまま他の家を襲った。

「行くぞ!」

「任せて!」

二人は同時に家から飛び出した。
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