時雨の奏でるレクイエム
クルーエルは城門のあまりの高さに首が痛くなるのを感じた。
ラディウスは門番となにやら話をしている。
今回の目的は、城にいるラディウスの兄に会うことだったのだが、こちらから話しかけるまえに門番に呼び止められたのだ。
門番とラディウスはなにやらいろいろと話しをしていたが、決着がついたのか、ラディウスが戻ってきた。

「入れてくれるらしい。ただし、ここでなく他の門からだがな」

「え?どうして?ここから入ればいいのに」

「この門は大通りの突き当たりにあるだろう。特別なことがないかぎり開く事はない。ましてや、ただの旅人である俺達に開けるような門じゃないんだ」

「ふうん……。そっか。体面とかあるもんね」

「正解。鋭いな」

ラディウスに褒められて、自然と笑みが浮かぶ。
最近は、ラディウスもたくさん話すようになった。
もしかしたら、元から無口というわけではなかったのかもしれない。

「さあ、決闘の始まりだ」

「頑張ろうね!」

二人は城を仰いで、挑戦状を叩きつける。
そして城壁の中に吸い込まれるように入っていった。
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