放課後姫とヤンチャな騎士
その時一瞬乃里子が剛志を見た。


黒髪のおかっぱ頭、不健康そうな白い肌、黒ぶちの眼鏡。


「あいつって、普段から眼鏡?」


「乃里子?
そうだよ。
眼鏡外したところは、見たことないなあ。」


陽太がそう呟くと、剛志は黙ったまま乃里子を見つめた。


「剛志?」


陽太が不思議そうに首をかしげた。


「ああ…
さんきゅな、これ借りてく。」


「うん、こっちこそごめんね。」


剛志は軽く微笑むと、教室を後にした。


その足で、剛志はクラブ塔に向かった。


女子生徒とぶつかった場所。


あのとき、コンタクトを落としたと言っていたのは、間違いなく乃里子だった。


恐ろしく目が悪いから、コンタクトと眼鏡を両方使っているのか。


別の理由でコンタクトをはめているのか。


剛志は少し思案した後で、関係ないかと思い直し屋上に向かった。
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