教室バロック
「 何が?
オマエもヒョウタン持つとか
似合い過ぎ 」
茶色いキモノをすでに着せてもらって
扇子を持ち、ドアに寄り掛かる姿は
『鴨』って感じだ
「 ん〜?
だってよ 俺、着方なんか
わかんないから
三野輪なんかに着せてもらったんだけど
…フツー女子高生が
あそこまでパッパパッパ
着物、着付けっていうのか?
出来ねえだろ? 」
「 そりゃあなあ…
この学校は一応、
小さい頃から
習わせられてるヤツ多いぞ 」
掛けておいた小豆色
坂本龍馬の
少し煤けたキモノを取り、袖を通す
これで髪を、ゴムで縛ったら準備完了
「 …って言いつつ
空哉も自分で着られるの?! 」
「 器用貧乏ですから 」
「 ―― ちょっと待てよ?
ってー事は…
正月、オシャレして来いよって女誘って、
…朝、お前の事呼べば… タダか 」
「 …テメエの発想はすぐそこかよ!!
びっくりしたわ!
それよりウチの学校で
カノジョ作ればいいじゃねえか
多分、自力で朝、着付け出来る確率
九割くらいあるぞ 」
「 おおおお!! そうだよな?!
やっべええええええ!!
夢が拡がり過ぎる!!」
クラスの男子がゲラゲラ笑って
「 バカ那智〜〜!! 」と
女子にガムテープやら軍手の
総攻撃を受けていた
修学旅行の一件から
那智はホントに花さんを心配していて
その姿をみてきたクラスメートの態度が
以前よりもだいぶ
緩やかになって来ていた