いつかのMerry Xmas
彼がその時口ずさんだ歌詞が、そのまま彼の気持ちだったと気付くのは、まだ何年も後の話。

その時の私は――、イチローの想いになんて微塵も気付かなかったから。

「でも、クリスマスイブの夜って、普通、明日の夜のことを指すんじゃないの? 本当、泥酔してるんだから。大丈夫?」

と、本気で心配したのだ。

彼が、どうして私を抱きしめてクリスマスソングを口ずさむのか、さっぱり理解できなくて。


ううん。本当を言えば、
私が大好きな曲だから、親切に唄ってくれたんだろうなー、くらいにしか考えてなかった。


だから。
一瞬、彼の顔が本気で呆れた表情になったときも、――その真意を汲み取ってあげることなんてできなかった。



これっぽっちも。
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