十字架
「知らない?…そんな事ある訳ないですよ!」
秘書は口許を緩めクスッと笑いだした。
「『Tragic History』って、最近CMでも流れてる人気のRPGですよ?…知らない人はいないと思ってたのに…。」
また口許を緩めてクスッと笑ってみせた。
「…そう、なんだ…」
渡辺の顔は少し引きつっていて状況がのめない様子だ。
「私、そのゲームに登録して、遊んでいるんですよ?しかも、毎日!」
秘書の姿は最初よりも変わっていた。
まるで、はしゃぐ好奇心旺盛な若者。
すっかり、渡辺のついていけない世界だ。
「あ、そうそう。私の名前…『杏梨』でやってるんですけど…」
秘書がしゃべった名前に渡辺は反応をした。
チラッとみて確認をすると、秘書はさらに話を続けた。