シルバーウルフ -Is this love?-
裕太の胸ぐらを掴む力が緩(ゆる)んだ。



農園の横の穴。神父の妻を埋めるとき、泣き虫を爆発させていた裕太を思い出したからだ。








……だが、単純だった。あの頃、ただ、俺たちは、腹いっぱい喰いたかった。


裕香は毎食、白い飯を半分と、日替わりの汁の全てを俺にわけてくれていた。



痩せっぽっちの裕香。



俺想いの優しい裕香。



それを横目で眺めていた裕太。見えないところで、腹を満たしていた。



俺を裏切って里子に行った裕香。






俺は胸ぐらから手を離した。裕太のこめかみに押し当てていたリボルバーを医院の処置台に向けた。



商売道具……、いや、金も貰わず堕胎してる……、ボランティア道具の処置台へ弾いた。



蜂の巣にしてやった。気は晴れなかった。裕太は処置台を振り返らなかった。



「街のど真ん中で裕香を弾いた。マーチの横だったから、マズイかもしれない。後はお前に任せる。」


俺は言った。医院を出ようとした。裕太は返事をしなかった。



「知らなかったとはいえ……、母親ってのを殺してすまなかった。」

俺は小さく、そう言い残して医院を出た。だが、俺の母親ってのが今日、死んだってことを忘れたワケではなかった。





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