新撰組~変えてやる!!

 夜、屯所を出た葵達は静か過ぎる道を固まって歩いていた。雲が多く、暗い道は行灯<アンドン>がなければ見えない。ガタガタと震え出す隊士が出た程だ。

 「大丈夫か?」

 「へ、平気です~…………たぶん…」

 隊士の声は情けなく震えていた。その声に葵も他の隊士も苦笑した。と、その時、強い風が吹き荒れ、ギラッと暗闇に何かが光った。何だ、と思う間もなく葵は半分程抜刀し、突如襲い掛かってきた刀を受け止めた。静かな京の夜に耳障りな金属音が鳴り響いた。

 「……っ…誰だ…!!」

 隊士達は突然のことに、ただ呆然と見ていた。

 「…流石は新撰組の総隊長……一筋縄ではいかぬか…だが、おなごのような軟弱だな。力がまるでない。」

 「…っ!?…何者だ!!名乗れ!」

 葵は後ろに飛び退きながら抜刀した。

 「貴様に名乗るような名ではない。すぐに無くなる命だ。名乗っても意味がないだろう?」

 葵は暗闇に鋭く光る目と刀に、底知れない恐怖を感じた。

 「…お前の狙いは俺か…?ならば、長州の者か?」

 「…俺はただの脱藩者だ。…いや、“ただの”ではないな。俺は維新側の人間だ。話は終わりだ。この維新の為…貴様の命、俺が頂戴する。」

 明らかな殺気を出す目の前の男は恐ろしいほどに冷たい目をしていた。

 “…駄目だ。こいつ、強い…ただでさえ、実戦には慣れていないのに…こいつらを逃がさないと…屯所に知らせなきゃ…!!”

 「…お前ら、走れるか…?走れるなら一に…斉藤隊長に知らせて来い。屯所にも知らせろ。総隊長命令だ…いいな!!」

 葵の言葉で我に返った隊士達が抜刀しようと、刀に手を掛けた。

 「命令だと言っているだろう!早く知らせて来い!」

 あくまでも目の前の男からは目を離さずに、葵は怒鳴った。気配で隊士達がいなくなったのを確認し、葵は口を開いた。

 「…何故、彼らをみすみす逃がした?お前なら、殺れたはずだ。」

 「…無駄な殺生が嫌いなだけだ。」

 男はふっと自嘲するように笑った。

 
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