指輪
待ち合わせは駅のロータリーに7時。
それまで美咲とあたしは駅周辺をぶらぶらすることにした。
ウィンドーショッピングをしながら今日のメンバーの名前を教えてもらったりとか、色んな話をした。
そして、待ち合わせの時間より少し早く駅のロータリーに着いたあたし達は、そこで他のメンバーを待つことにした。
「まだかな?」
美咲がそういいながら学生やサラリーマンの流れに目をやった。
あたしも相槌を打ちながらメンバーらしき人たちを探してみた。
その時ふと目に入った一人の人物。
見間違えることなんてあり得ない人物。
琢磨だった。
楽しそうに話す隣には、知らない女の人がいた。
血の気が引いていく感覚が、目頭が熱くなる感覚が手に取るように分かる。
時間が止まったように琢磨だけを見つめてしまう。
ダメだ、泣く。そう思った瞬間。
「お待たせー!!」
少し非常識なほど明るくて大きい声によって、現実に引き戻されたと同時に、あたしの涙は驚きで止まっていた。
良かった、こんな時に泣いたらただの空気の読めない子になってしまう。