青騒のフォトグラフ―本日より地味くんは不良の舎弟です―
「お前等知ってっぞ!」
チビ不良は声音を張った。
「合気道を習っていた双子の愛海と勇気だろ! 同じ道場に通ってたから憶えているぞ。だけど、入って二年ちょいでやめたよな」
マジかよ……じゃあそれなりに……。
「そーそー。中一でやめた。でもそれなりに腕はあるよ? ね、ゆっちゃん。二年も続けていたんだし」
「ん、一人じゃ無理だけど二人なら清隆を相手にできる。そうヤマトは踏んでオレ等を仲間に引き入れた。肩を負傷しているらしいしな、清隆ひとりどうってことない。あっちゃんと一緒ならやれる」
うっわぁ、キヨタ対策は万全!
向こうも俺等の面子を徹底的に分析して調べ上げたみたいだ。
わざわざキヨタと同じ道場に通っていた輩を仲間に引き込むなんて。
結構ガタイいいぞ、あいつ等。
体もでかいし。
ちびなキヨタには不利だ。
だけどキヨタはやる気満々。
「ケイさんに手出しはさせねぇ」
目を眇めて、二人まとめて相手をしてやる。
捨て台詞を吐いて構えを取った。
「いいね」紅の愛海、「腕がなる」白の勇気、「「仕留める!」」声を揃えてキヨタに襲い掛かる。
奥の通路に避難する皆とは別行動を取る双子不良。
キヨタは俊敏な動きで相手の攻撃を受け流して、肩の痛みに耐えながらも、苦戦を強いられながらも果敢に相手の挑戦を受けている。
「キヨタ!」
腕っ節のない俺じゃ助太刀することのできない。
邪魔になると分かっていつつも、心配のあまり名前を呼んでしまう。
「負けません!」
キヨタは俺に向かって意気込んでみせた。
どんなことがあっても負けない、だからこっちは任せて欲しいとキヨタは俺に懇願。だけど、お前……ひとりじゃ!
俺の心配を受け流すキヨタは、
「ちゃんと認められたいんっス!」
合気道を習っていたからどうのこうの、そんな認められ方じゃなくて、ちゃんと一人の男として認められたいと声音を張った。
あいつは言う。
自分は利二みたいに兄分を理解してやれることも、モトみたいに兄分の悪い点を指摘することも、何もできない不器用不良。
分かっている。
兄分を支えられる弟分こそが舎弟になれる、と。
俺とヨウのコンビを見ていたり、モトの心意気を見ているから、それを大きく痛感している。
舎弟になる以前に、自分はまだ兄分に認められていない。男として、キヨタとして、認められていない。
でも尊敬している気持ちは負けないから、尊敬している人の前じゃ格好悪い姿見せられないから、誰よりも俺に認められたいから。
「俺っち、ケイさんみたいにどんな苦難があってもッ……それを乗り越えられる男になりたいっス。
逆境でも屈しないケイさんみたいになりたいっスからっ! 此処は任せて! ケイさんはっ、奥の通路を!」
「キヨタ……お前ってホントバカヤロウだ!」
「はいっス。ケイさん馬鹿っスよ、俺っち」
「バッカ」
床を蹴って俺はこの戦闘をキヨタに任せた。
俺みたいな男を、こんなにも尊敬しちまってさ!
ほんとに馬鹿だ。馬鹿過ぎるって。
認めていない? ンなわけねぇ……認めているよ。
合気道ができるできない関係ナシにお前は俺の弟分。
地味野郎の俺をこんなにも尊敬してくれる、馬鹿で真っ直ぐすぎる可愛い俺の弟分だよ!
負けんな、キヨタ! 俺はお前を信じているからな!
走る俺が向かった先は奥の通路。
健太を含む面子の何人かはあそこを潜っちまったけど、まだ親玉の日賀野や副頭の斎藤、帆奈美さんや魚住が残っている。
戦力の要が此処に残っているんだ。
あそこの通路を塞げば扉を閉めるだけでも時間を稼げる。
向こうの目論んでいるゲームを阻止することが出来る!
それに向こう通路が裏口に繋がっているということは、協定を結んでいる不良が援軍が入ってくる可能性もっ……止めないと。
何がなんでもそれだけは止めないと!
「おーっと舎弟くんが何かしよるっちょんまげ!」
俺の行動を読んだ魚住がウザ口調で追い駆けて来た。
短めの若葉色の髪が視界の端に入った。
本当に負傷しているのか?
疑問を抱くほど機敏な動きで右ストレート。
ヤラれる――!
痛みを覚悟した俺を助けてくれたのはオレンジの長髪を動きに靡かせた不良。