青騒のフォトグラフ―本日より地味くんは不良の舎弟です―
通路、そう俺は通路を塞がないといけないんだよ!
あそこの通路に繋がってる扉を閉めて、椅子か何かで固定すれば向こうが外に出ることも、援軍を中に呼び込むこともできなくなる。
急げ、急げ、いそげ。
焦燥感に駆られる俺の前にまたしても邪魔者。
目と鼻の先の距離に大ボス、魔王降臨。俺のトラウマ降臨。
俺はギョッと目を削いで大きく後退。
な、なんで、お前が目の前に現れるんだよ!
畜生、ヨウはどうしたんだよ、ヨウは!
ドッと冷汗を流す俺に対し、ニンマリ口端を舐めて獲物を狙うように目を細めてくるのは日賀野大和。
クツリと喉を鳴らしながら笑って、
「よっ、プレインボーイ」
急いで何処に行くんだと歩み寄って来る。
ぎゃあああ来るな来るなくるな! 俺のトラウマぁあああ! ヨウはどぉおおしたぁあああ?!
「あはは……どーも。今日も素敵に無敵そうなご様子で」
「ククッ、お前も相変わらずだな。プレインボーイの心は読めている。舎兄はどうしたって素振りだな?」
ポンピン!
あいつは一目散にアンタに突っ込んで行ったってのにぃいい何しているんだあのイケメン不良はぁああ!
マジ、無理、むり、アンタだけはガチ怖くて体の芯が震えてらぁ! フルボッコの記憶がまざまざと脳裏に過ぎる。
と、取り敢えず落ち着け。
ええっと、さっきまでヨウは日賀野に突っ込んで相手をしていた。
近くには帆奈美さんもいてカウンターら辺でドンパチしていた。
カウンター付近には倉庫部屋っぽい部屋があって。
あ、その部屋からドンドンと叩く音が聞こえる。
「ヤマトテメェ!」
扉の向こうから聞こえてくる怒声……まさか!
「ヨウ、あの部屋に閉じ込められたのかっ!」
なんて間抜けなんだい兄貴!
開始早々閉じ込められるなんて!
「さすがはプレインボーイ、よく頭が回っている。あいつは単純馬鹿だからな。ちーっと攻撃を誘って、倉庫にどーんっとな。
ちなみに帆奈美と一緒だろうぜ。おっとプレインボーイ、二人のお邪魔をしちゃ野暮ってもんだぜ? 今からは二人のアダルトタイムなんだからよ」
「は? アダルト……?」
どういうこと?
アダルトタイムってなんか卑猥なんだけど。
「ま、今はどーでもいいだろ。田山、貴様は俺のお相手してくれよ。遊ぼうぜ? 俺は貴様と遊ぶことが大好きなんだ。
お前の土地勘はこっちにとって脅威だしなー? 俺とあーそびましょ」
「おぉお、俺は全然お好きじゃないです! ついでに土地勘、そんなにないっす! ほんとっす!」
ヌァアアア! 歩み寄ってくんなよぉおお!
おりゃあ半泣きだぞ、泣いちまうぞ! 男の子でも泣いちまうんだぞ!
レベル5の俺がレベル99の日賀野に勝てるわけないじゃないかあああ!
フルボッコされたからこそ身を持って分かるんだぞ実力の差!
誰かひのき棒、せめてひのき棒を俺に……ああもう、ヨウっ、アーニキッ!
なんでこいつにしてヤラれているんだよぉおおお!
俺がこいつのことをすこぶる苦手なのは知っているだろぉおお!
カウンターに逃げ込む俺をジッリジリ追い詰めてくる日賀野。
ネコがネズミを甚振っている図になってらぁ。
畜生、いっそ丸呑みにしてくれ。
楽に死なせてくれ! 嘘、俺は生きたい! 死ぬなら温かいベッドの中で安らかに死にたい!
「なあ、プレインボーイ。どうして俺がテメェを舎弟に狙ってっか分かるか?」
カウンター台を挟んで飛んでくる質問。
ンなの知るかい!
理由としては俺がヨウの舎弟だからだろう!
ついでに俺をからかいたいからだろい! ……なんかヤーな予感がするんだけど。
聞いちゃいけない領域に敢えて踏み込んでしまうのは人間のサガなのだろうか。
「なんで、なんですか?」
質問して大後悔。
日賀野は面白おかしそうに答えた。
「手に入り難いと分かっているほど、手に入れたくなるタイプなんだ俺は。ついでに俺じゃなくて荒川を舎兄に選んだっつー現実がなぁ。超ムカつくから狙っている。
テメェの能力も買っているが……なんで俺が荒川如きに。あいつに負けるなんざ癪も癪だ。分かるか? プレインボーイのせいで、俺、黒星が付いているんだぞ。責任取って白星にしやがれ」