チャンピオン【完】
それは私にとって、とても魅力的な提案であった。
欲しい服、鞄、化粧品、アクセサリー、お小遣い欲しいなんて言えなくてずっと我慢していたけど、みんな一万円あれば買える。
物欲に敗北した私を笑うが良い。
『用意出来たら食堂に来てね♪ 貴丸呼んでおくから♪』
軽い足取りで兄貴は去って行った。
私は溜息をついてから、クローゼットを漁った。
デートって言っても黒ジャージの野獣とだろ?
友達にあんなのと一緒にいるとこ見られたくない。
一緒に歩くのも嫌なんですけれども!!
出来るだけ、カジュアルなのにしよ。
ジーパンにセーター被って、コートでいいや。
あいつ、どうせジャージだし。