チャンピオン【完】
見てはならぬものを見てしまいました。
エンドロールが流れ出し、人が動き出したのと同時に私はハンカチを彼の手に押し付けた。
「し、しっかりして下さいよ!
もう! いい年して何泣いちゃってるかな!?」
「... こういうの、弱いんだ... 」
はぁ、と溜息が聞こえ、彼は狭い椅子いっぱいに身体をズリ下げて顔を上に向けていた。
彼の精悍な顔に感動の涙は異常に似合わなかった。
溜息をつきたいのは私の方だ、と思った。
腫れた目を隠すためなのか、映画館を出たときには彼は何処からか取り出したサングラスを装備していて、ますます堅気に見えなくなった。
日も陰り始めた夕方だと言うのに、異様である。
人通りの多い駅前なのだが、彼が歩くとさりげなく人が道を空けた。
みんなお利口だ。
こういう物騒な人とは、関わらないのが一番なのだ。
「... こえーよ」