さよならさえも、下手だった


「そんなに殺されたいか」

脅されたって、私は退かなかった。

「殺せばいい」

肺が凍りつく。

「でも、何をしたって同じよ」

呼吸が浅くなる。


「あなたに夜十は汚せない」


どれほど醜い世界にいても彼は優しかった。
私を救ってくれた彼を、今度は私が助けたい。

「もう二度と、人殺しなんてさせない」

「生意気な」


彼のナイフがためらいなく私に向けられる。
夜十、逃げて。



――ドン



何が起こったのかわからなかった。
痛みはいつまで経ってもやってこなかった。

それもそのはず。


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