さよならさえも、下手だった
刹那の手にあったナイフは弾け飛んでいた。
私の後ろから撃たれた弾によって。
「く…っ」
夜十が苦しそうに顔を歪める。
見捨ててくれたらよかったのに。
そうしたらあなただけでも助かった。
「言っただろ。苦しいかもしれないけど、生きて、くれって」
途切れ途切れに言葉を発し、夜十が私にもたれかかってくる。
首筋に当たる吐息が、熱い。
「刹那…。旭を仕向けたのも、お前だろ」
「その通りだ。だが所詮は役立たずだった。あいつも、お前も」
私はそっと夜十の手を握る。
彼がもう怖くないように、苦しくないように。