さよならさえも、下手だった
夜十も私の手を握り返す。
互いの温もりが交わって、さっきまでの恐怖は消えうせていた。
私の呼吸も彼の呼吸も、ずいぶん楽になっていた。
「殺せばいいだろう」
信じられない言葉と共に刹那が両手を挙げ、降伏の姿勢をとる。
驚いているのは夜十も一緒だった。
「そう言って、殺そうとした瞬間に返り討ちじゃないのか」
わかってると言ってあきらめたように肩を落とすと、刹那はそれを鼻で笑った。
「相手の戦意喪失も見抜けないのか、落ちこぼれ」
「何言って…」
「武器はもう無くなった。お前を殺すことはもうできない」
夜十がハッと息をのむ。
それは、つまり…。
「落ちこぼれは落ちこぼれらしくさっさと逃げろ、”夜十”」
最初で最後の救いの手。
もうあきらめていたからこそ、その救いはうれしかった。
涙が出そうなほど。