屍都市
これまで幼いなりに気を張って、自分を強く保っていたのだろう。

その緊張の糸が切れたのか、今まで『お母さん』と呼んでいたのも忘れ、雄大は『ママ』と叫びながら純の胸に飛び込む。

純もまた、それを咎めはしなかった。

この子が…雄大が生きていてさえくれればそれでいいのだ。

しゃがみ込み、雄大を受け止め、力一杯抱き締める。

…汚れた顔、ほつれた服、汗をかいた体。

それでも雄大は、いつもの日向の匂いがした。

やっぱり雄大だ。

間違いなく私の子供…。

「よかった…雄大…」

柔らかな髪の毛に頬を埋め、純はジワリと涙を浮かべる。

「あ、あの~…」

山田が恐る恐る口を挟む。

「その子…純さんのお子さんだったんですか…?」

知らずに雄大を保護していた山田は、驚きを隠せない。

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