屍都市
だが今日に限って言えば、音も声も一切聞こえない。

寒気がするほどに静まり返った工事現場。

「……」

その静けさがかえって不安を煽る。

純は思わず自分の身を両手で抱き締めながら、ゆっくりと現場の中を歩いた。

誰もいない。

気配さえ感じない。

現場には誰も来ていないのだろうか。

あの混乱だ。

工事現場に来る事を断念して、安全な場所に避難したのだろうか。

それとも一旦ここに来て、誰もいないのを確認して帰っていった?

それならばいいのだ。

仲間達が無事ならば、この場にいない事はむしろ安心できる材料になる。

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