屍都市
勿論工事では主力は重機ではあるものの、機械ではできない細やかな作業の際には、人の手でスコップで穴を掘ったりする事もある。

土木作業員にとってスコップは日常的な道具だった。

純は手馴れた扱いでスコップを駆使する。

殴る、先端で突く、側面で叩く。

まるで元々そういう武器であったかのように、自由自在に使いこなしてゾンビ達を退ける。

感情のないゾンビであるが、女である筈の純がここまでの抵抗を見せる事には少々戸惑っているかのように見えた。

ここに来るまでに捕食してきた人間の女の殆どは、逃げ、泣き叫ぶだけで、まともに抵抗など出来なかったというのに。

純に限って言えば、捕食どころか近づく事さえ困難なほどの抵抗だった。

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