とある堕天使のモノガタリ
~INTROITUS~
不安そうな忍の表情に俺も警戒する。
「そろそろ“来る”かもしれないな」
俺の言葉に困惑する忍に「大丈夫だよ」と微笑んだ。
「傍にいろよ?ちゃんと守ってやるから。」
「...うん...わかった。」
少し表情を和らげた忍を見てから小さい声で話した。
「例の溺死させる幽霊の話あっただろ?あれの犯人はもう判ってるんだ。」
「え!?」
「元・座天使だったフォカロルって堕天使なんだけど、問題はそいつじゃない。」
「どういうこと?」
「フォカロルは気の弱いやつでさ。
自分から人を殺めるなんて事をするようなヤツじゃない。
つまり、フォカロルを召還したヤツが問題だ。」
「その召還した人が命令してるってこと?」
「ん。おそらくな。」
忍はしばらく考えてから俺に聞いた。
「ねぇ。フォカロルっていう堕天使は悪魔なの?
ウリエルだって堕天使じゃない。」
「あぁ、そうだな。極端にいうと堕天使にも2種類いるってことさ。
“神”の側につくか、“ルシファー”の側につくか。」
「そのフォカロルはどっち?」
「今はどっちかと言うと“ルシファー”だな。でもアイツはまた座天使になりたがってる。
説得できれば悪魔にはならずに済む。」
「そうだね...説得してみて?かわいそうだもの...」
そう優しく言う忍に俺は「わかった」と答えた。