とある堕天使のモノガタリ
~INTROITUS~
お腹のいっぱいになった俺はシートに寝そべって昼寝をしていた。
忍は「あんま焼きたくない」と言ってパラソルの下でうつ伏せになっていた。
不意に忍が飛び起きた。
「どうした?」
「また見られてる...どこ??」
俺も辺りを見回す。
「どうかしたのか?」
虎太郎が俺達の様子に気付いた。
「召還者だ。どこかにいるぞ。」
俺の言葉に虎太郎も辺りを見回す。
海辺ではビーチボールで遊ぶ寛二とクミとセリ...
向こう側には陸と浮き輪に浮かぶアイコが見えた。
突然突風が吹いた。
あおられたパラソルに気を取られたが、すぐに視線を戻す。
と、浮き輪に浮かぶアイコが急に消えた。
「フォカロルだ!!!!」
俺は海に向かって走り出した。
後を追って虎太郎が来たが、「忍を頼む」というと頷いて戻った。
俺は海に飛び込むと沈んでいくアイコを見つけた。
風の代わりに体のまわりに渦を起こしながら6枚の羽根を出す。
だが水の中では6枚の羽根は邪魔だった。
…くっそ…
とっさに4枚の羽根を体に巻きつけ、2枚の羽根を羽ばたかせて水中を移動した。
…居た!!
気を失ったアイコの腕を掴んで引き寄せた。
そのまま上昇し、一気に海上に出る。
「アイコ!!」
心配そうな表情をした陸が近寄って来た。
「浜辺まで連れて行けるか?」
「あぁ、大丈夫だ!」
俺が「頼む」と言って引き渡すと陸が不思議そうに俺を見た。
「ちょっと海に“忘れ物”をした」
そう言って口角を上げると、俺は再び潜って下降していった。