とある堕天使のモノガタリ
~INTROITUS~
稽古中ひとりひとりの太刀筋を見るが、止むことのない会話に圧倒されそうだ。
「右京君は今年高校卒業だったか?どうだね、うちの娘の婿に来ないか?」
「清水さんの娘さんはまだ中学生じゃないですか…」
「将来って話だよ!」
「いや、俺には勿体ないですよ…
…もう少し腰を落としてみて下さい…」
「清水さん、知らないのかい?右京君は忍ちゃんの彼なんだよ。」
「後藤さん、なんでそんな事知ってんですか!!
俺の事はどーでもいいでしょ!?
…ほら、重心ズレてますよ!」
「するってぇと、あれかい!“禁断の恋”ってやつかい!若いね~」
「別に禁断じゃないですから…」
このオッサン達は何しに道場に来てるんだとツッコミを入れたくなる。
終始このペースで稽古が終わる頃には俺は精神的にグッタリだった。
帰って行くオッサン達は「今度娘連れて来るから~」と手を振りながら叫んでいた。
負けじと俺も「絶対に連れて来ないで下さい!」と手を振り返すのだった。
夕方あたりから薬が効いて元気になり始めた師範が、今日の道場の様子を聞いて来たので思いっ切り愚痴ってやった。
「後藤さんじゃろ?ありゃワシの飲み友達じゃ。」
「清水さんもウザかったぜ…」
不機嫌な俺に師範はカッカッカッと大口を開けて笑った。