【完】歌姫、そんな声で鳴かないで!
入浴シーンの撮影も終わり、私の撮影は一旦休憩となる。



バスローブを着て、下着を身に纏い、スタジオから控室へ戻るとき、私は呼び止められた。



「花巻飛鳥ちゃん。君、凄いね。どこか劇団にでもいたの?」



それはさっき兄貴が言っていたヤスの事務所の社長で、私は会釈する。



「いえ…全く。今まで、こういった世界とは無縁に生きてきましたから。それじゃあ。」



「着替えたらヤスの撮影を見にいらっしゃい。」



その場を去ろうとする私に、社長はそう言ってうっすらと微笑んだ。
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