君が教えてくれたこと
「おはよう!」
高校生活最後の一年が始まった。
でも、何も変わらない。
岡田の馬鹿デカイ声で、一日は始まった。
僕らが通う高校は、山の上にあった。
毎日登るのは大変で、冬になると学専バスも登るのを断念する。

軽の車はもちろん、登校する学生達が、後ろから車を押す、なんていう光景も、さほど珍しくはなかった。
「俺、後から行くわ」

「渡辺ちゃん」
幸太朗が、からかう様に、僕を見て言った。
「なんだよ」

「珍しいよな、お前より遅く来るなんて」
岡田に言われて、待ち合わせの時間を過ぎていることに気付いた。
「もう、こんな時間か」
  

高校に一番近いバス停の前には、コンビニがあった。

たまたま朝、コンビニで由梨に会い、
それから毎日、一緒に山を登って学校に通っていた。
「じゃあ、先行ってるぞ」

「おう、悪いな」
岡田達が、学校に向かってから、僕は本を立ち読みしながら、一人で由梨を待っていた。

その日・・

由梨はコンビニにも、学校にも来ることはなかった。
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