トリップ

よたよたとまだ不安定な足で街中を歩く。
つい自分が起きていた時まで母親は自分の隣にいたのに、それが目を覚ました時には街中で独りぼっち。
起こることすべてが理解できなかった。

生まれてから切られていない黒髪は伸び放題。雨の日に捨てられていたため、服もボロボロ。こんな服装で人に何か言えば無視をされ、酷いと罵倒されるのかと、捨てられて2日で分かった。
唯一、かけられたマシな言葉は、同い年の少女がくれた「こんにちは」という一言くらいである。

歩き続けたので疲れ果てたのか、少年は昨日の雨で濡れた河川敷の芝生の上に寝転がる。
もう日が沈みかけ、夕日も見えなくなっていた。

近くの橋の方から少女と男がこちらを見ている。少年は不思議に思ったが、無視することにして目を背けた。

春の下旬となるこの日は寒くも暑くもない、風邪をひきにくい時期だ。

しばらく寝転んでいると、誰かが少年の体をゆすった。大きく温かい手が肌に触れると、何故か安心感に満たされるような気分になる。

「おーい、起きてるか?」

悠長な言葉で話しかけられ、その方を見てみると、先ほど橋の方からこちらを見ていた男だ。

「よし、起きてるな。早く帰らないと、風邪ひくぞ」
「・・・」

意味の分からない言葉だったので、何と言ったらいいのか分からない。

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