トリップ

自分を起こしてくれようとしているのか、その大きな手で男は少年を引き上げた。

とても温かく、放したくない、という欲求に駆られそうになる。

「ん?どうした?家に帰るんだろ?」

突然立ち止まった少年を、男はキョトンとして見つめた。

「土岐ー、どうしたの?」

男と一緒にいた少女が駆け寄ってくる。6歳ほどと覗えた。

「?誰?この子」
「分からないなぁ・・・何も話してくれないし・・・」
「服・・・ボロボロ。転んだの?」

少女が聞いてくるが、少年は答えない。
まじまじと少年を見ると、少女は「ふぅん」と少し笑顔になりながら土岐と呼ばれた男の方を見る。

「ねぇねぇ、この子、私たちのところに連れて帰ろうよ!」
「えぇ?それは拉致っていうか・・・連れ去りになっちまうって」
「えー?一日くらいいいでしょ?」
「この子のお母さんに聞いてみないとダメだろ」
「だってー、この子、顔可愛いんだもん」
「秋乃、お前・・・イケメンかそうでないかってことか・・・」
「そーだよっ♪」

秋乃と呼ばれた少女がニッコリと少年に笑いかける。

「ねぇボク、名前なんて言うの?」
「・・・」

少年が何も喋らないのを見て、土岐は「まさか」と呟く。

< 330 / 418 >

この作品をシェア

pagetop