トリップ
「うーん・・・。外国人なのかな?」
「え!どこ?アメリカ?フランス?」
「顔がアジアっぽいから・・・韓国か中国ってとこだな。挨拶してみるか」
「うんっ」
秋乃は大きくうなづき、少年にグッと顔を近づけて笑う。
「ニーハオ」
少年はピクリと反応する。初めて、自分の分かる言葉が出たからだ。
「悠好・・・」
「わぁっ、喋った!声も可愛いー!ねぇ土岐、やっぱり持ち帰ろうよー」
土岐は「この子は商品か」と苦笑する。と同時に、少年の持っていた紙に注目する。
「ちょっとそれ、見せてみろ」
柔らかい口調で言われると、少年は従うままに紙を渡す。紙をゆっくりと読むと「なんてことだ」と険しい顔つきで呟く。
「やっぱり・・・捨て子か・・・」
紙に書いてあったことを思い浮かべ、土岐は少年を見る。弱り果てて、光すら宿していないその目を見つめる。
『親切な人、もらってください。この子の名前は――檜 天李です』
何故こんなにも幼い子供を捨てるのだろう。土岐は疑問に思う。
そして、少年を抱き上げると「よしっ」と活気のある声で言った。
「こいつ、お持ち帰りしようか!!」
「やったー!」と喜ぶ声が、少年の耳に響く。