トリップ



土岐に連れてこられて来た所は、公民館。ドアを開けると、数人の中学生や小学生、それ以下の年齢の子供たちが少年の目に入る。

少年は「誰?」と言いたげな目で土岐を見上げる。ニコリと笑いかけると、子供たちに届く声で土岐は言う。

「今日から、この子も仲間入りだ!」

周りにいた子供たちが全員少年を見ようと寄り集まってくる。

「可愛い・・・愛らしいんですけど!」
「男の子?女の子?」
「名前何っていうの?」
「こんなに汚れて・・・泣かないって偉いな」

日本語が多く飛び交うので、少年はくらくらとしそうになり、恐る恐る土岐を見上げた。

「大丈夫。こいつらは皆優しい」

伝わったのかどうかは不明な所だったが、安心したように少年は土岐から降りて1人で立つ。そして、しっかりしているのか頭を下げ、挨拶する。

「こん・・・・にち、は」

路上で少女にかけられた言葉を思い出しながら言うと、全員キョトンとした顔になる。それをフォローするように、土岐も呼びかけた。

「この子はまだ小さい。それに中国の子だから、日本語の所では甘く見てやってくれ」
「あ、そっかぁ」
「中国語で挨拶してくれても良かったのにー」
「しっかりしてるんだなぁ」

言葉は通じない。しかし、直感なのか少年には悪い言葉のように聞こえなかった。

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