気付いてよ
なんで悲しいと涙が出るのかな。
別に泣きたくなんかないのに。
ドンッ。
「わっ。」
なんだか固いもにぶつかった。
目の前がワイシャツの白になって、誰かにぶつかったんだと分かった。
あ、涙。
「ご、ごめんなさい!」
すぐさま謝った私の頭の上から聞こえてきたのは、最近ではすっかり聞き慣れてしまった声だった。
「また泣いてるの?せっかく頼っていいって言ったのに。」
少し不機嫌な声の主に目を向けるとにっこりと私に笑かけた。
「ちょっと考えごとしながら歩いてて、ごめんね。」
「考えごとって?」
「え…。」
朋のことだなんて、言えなくて、とっさに目を反らした。