気付いてよ

「そろそろ暗くなるし、帰った方がいーよ。もう幸村もあそこにはいないでしょ。」

立ち上がりながら大倉くんが言った。

「うん。大倉くん、今日は、ってゆーか、今日もホントにありがとう。」

ありがとう、それだけじゃ足りなくって頭を下げた。

「いーのいーの。じゃあ、また明日ね。」

「うん。また明日。」

「…」

「えっ?」

大倉くんが何かを呟いた気がして私は聞き返した。

「なんでもない。じゃーね。バイバイ。」

手をひらひらさせながら、公園を去って行った。

私の例えが間違っていないってどういう意味だったのかな。

昨日のお母さんの言葉が頭に蘇る。

まだ私が朋を好きなことは仕方がないことなんだ。

でも、出来ることならその忘れられる時が早めに来て欲しかった。

報われない恋はやっぱり楽しくはないから。

いつか、好きだと言ったら同じ言葉が返ってくるような、そんな普通で当たり前な恋愛が出来る日が私にも来るのかな。

そして、その時の私は、朋の幸せを願えるようになっているのかな。

未来の自分の隣に初恋の人がいる確率なんて、1%にも満たないのに、そんな自分を想像したくないなんて、私は相当我儘だ。

でも、いつか私がその位朋のことを好きだったと、今まで出会ったどんな人よりも、これから出会うどんな人よりも特別だったと伝えられる日が来ればいいなって思った。

たとえそれが下らない妄想だと分かっていても。
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