気付いてよ

そういえば、俺が昨日奏に用があって家を訪ねたとき、奏はいなかったんだよな。

奏のお母さん、恵美子さんが友達の家に遊びに行ってるって言ってたっけな。

今の状況からして、奏は俺が来たことを知らないみたいだから、恵美子さんが伝え忘れたってとこだろう。
恵美子さんって抜けてるとこあるよな。

だから、昨日の夜なんでいなかったんだ、って聞いたんだ。

そしたら、ケロッとした顔で奏は答えた。

「昨日の夜はこばと私で真那の家に言ってたんだよ。」

真那っていうのは、奏の仲の良い女友達だ。
で、こばっていうのは小林っていう男子。
あいつと仲良かったっけ?

っていうか、俺が奏の家を訪ねたのは8時ごろだ。
そんな時間までなんて、危ないだろ。
小林は男なんだし。

自分の彼女が他の男子数人と遊びに行ったって何とも思わないのに、どうしてか今の俺はこんなことを考えてた。

でも、この気持ちがどこから来てるのかなんてこの時の俺は気付いてなかったんだ。
というか、どこからなんて考えようともしなかった。

後で死ぬほど後悔するとも知らずに。



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