気付いてよ

でも、俺には最後の方の白石の言葉は耳に入ってなかった。

昨日一緒に帰ったとき、奏はそんなこと一言も言ってなかった。

なんで、言わないんだよ。

気付くと奏のクラスに着いていて、俺は自分が思う前にそのドアを開けていた。
びっくりした顔の奏がいたような気がするけど、よく覚えてない。

そして、奏の腕を掴んだ。

「奏、帰るぞ。」

心なしか不機嫌な声になっていた気がしたけど、そんなことに気を回してられなかった。

掴んだ腕引っ張って歩き出す。

なんだかモヤモヤする。

一体何なんだよ。

考えてもこのモヤモヤとした感覚の原因なんて見当もつかない。

そのことにイライラしてきたところで、突然腕を叩かれて現実に引き戻される。

「…も!?朋!痛いってば。」

斜め後ろから切羽詰まった声が聞こえて来た。
聞き覚えのある声に俺ははっとなって、慌てて手を放す。

「わ、わりっ!」

少し息を切らした奏に睨まれる。
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