気付いてよ
すると、奏は目を擦りながら言った。
「ご、ごめん。なんか目に入った。痛くて涙出る。ってゆうか、今思い出したけど、今日までの課題出すの忘れてた!せっかくやったから出してくる。時間かかるかもだから、朋は先帰ってて!」
笑って言った奏の顔はいつものそれと変わりなくて、バカな俺は赤い目は本当に目に何か入った所為だと本気で思っていた。
奏が来た道を戻ろうとしたから、俺はすれ違いざまに言った。
「分かった。じゃあ先帰ってるな。目薬させよなー。」
そして、奏は後ろ向きのまま俺に言った。
「ありがとね。あと、大倉くんのことはよく知らないから、とりあえず友達になっただけだよ。」
じゃあね、と言いながら走って校門の中へと戻って行った。
なんだ、やっぱり断ったと同じじゃん。
奏は押しに弱いところがあるから、せめて友達になってくれという大倉を断ることが出来なかったんだろう。